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【イベントレポート】本棚を編集する〜書店員というくせのゆくえ【やっぱり本屋は面白い】

2022年2月18日

本棚 編集

みたっくす

こんにちは。みたっくす(@book_life_net)です!

『本棚を編集する〜書店員というくせのゆくえ』というイベントに一般参加してきました。2022年3月に発売される『編集の提案』という本の刊行記念イベントで、書店員さんの「編集」にフォーカスしたオンラインイベントです。

社会の中でバラバラになっている断片をつなぐことで新しい見方を生むということが広義の「編集」と呼ぶのであれば、年間72,000点も発行される新刊書籍をセレクトし、並べて空間を作ったり、イベントを企画したりしている書店員さんの仕事はまさに「編集」ということではないか。そうした考えが起点となり、書店員さんに「編集」についてお話を伺っていく内容です。

ゲストの書店員さんは、以下の3店舗、4方でした。

  • 青山ブックセンター本店 店長 山下優さん
  • ON READING 店主 黒田義隆さん 黒田杏子さん
  • REBEL BOOKS 店主 荻原貴男さん

※各本屋については、ページの最後で紹介しています。

「本屋の面白さ」をみっちり2時間感じた内容でしたので、イベント内容と交えてご紹介させていただきます。

ゲストの書店員さんの共通点

ゲストの方々の共通点は、今回のイベント主催者である黒鳥社の若林氏とNY在住のジャーナリスト佐久間裕美子氏による『こんにちは未来』という著書をたくさん売った本屋という共通点があります。

実は、この『こんにちは未来』は、取次を通さず、出版社×書店で何かできないかという企画で出版された本です。

その座組は、書店である青山ブックセンターが発売元となり、本屋に下ろす役割を担っています。そのため全国の本屋は、本屋の青山ブックセンターさんに注文して、本を仕入れるという形をとっていました。もちろん返品不可の買い切りです。

取次を通す書籍の多くは、返品可のものですので、この本を売ろうとした本屋側は、相応のリスクを取って仕入れたということになります。そのうえで売った訳ですから、それには何か理由があるのではないか?

そうした理由から呼ばれた方たちです。

ちなみ『こんにちは未来』の電子版のみ、アマゾンのkindleストアで購入が可能です。

また偶然なのか、どの本屋も出版社としての取り組みを行っているのもユニークで、本を販売するだけなく、出版する取り組みをされているという点も共通しています。

本棚を編集する書店員

では、書店員さんによって本棚はどのように編集されているのでしょうか。

青山ブックセンターの「編集」

青山ブックセンター本店

画像引用元:青山ブックセンター公式HP

中規模サイズの本屋ということで、大手取次さんとの契約関係もあり多くの書籍案内が届くといいます。

届き方の主力は、FAXで、店主の山下さんであれば担当しているジャンルの本棚のために、5日毎に300枚以上のFAXの中から良さそうな本を選んでいるといいます。その数は、良くて10冊。つまり1ヶ月で1000~2000冊の中から50冊前後を選んでいるようなことをしているとのことでした。

選定基準に関しては、青山ブックセンターのお客様のことを考えながら今より半歩先と感じれる内容の本を選び、提案できるようにしているといいます。

面白いことに青山ブックセンターで売れる本は、全国では売れないという事実があるとのことです。その証拠となるエピソードとして、2015年に全国ベストセラーを集めた棚作りをしてみたが、それまでよりも売上が落ちてしまったという経験を語っていただきました。

そうした経験もあり、青山ブックセンターらしさを考えはじめて、その結果、青山ブックセンターだから売れるものを揃えるようになり、今ではカルチャー感じる書店でありたいと考えて棚を作っているとのことです。

REBEL BOOKSとON READINGの「編集」

REBEL BOOKS(レベルブックス)

画像引用元:REBEL BOOKS公式HP

一方で、独立系書店とも呼ばれるREBEL BOOKSとON READINGは、大手取次とは契約をせず、基本は専門的な小規模の取次さんや出版社と直接やり取りする仕入れ方をしているとのことです。

一部は返品可のところもあるとのことですが、返品はしない方針で仕入れて、販売しているとのことでした。

選ぶ基準は、REBEL BOOKSでは、店主の荻原さんの好き嫌いよりも幅をもたせて選ぶことを意識しているとのことです。またこの人買いそうだなとお客様のことを思って仕入れているケースも多いとも話されていました。

ON READING

画像引用元:ON READING公式HP

ON READINGは、そもそも、名古屋に欲しい本がなかったのがきっかけでお店を始めたエピソードを語っていただきました。今では、この街にどんな本が必要か?という視点を大事に選書し、お店を通して提案をしているとのことです。

皆さんに共通していた興味深い発言は、自分たちの1店舗でできることにも限界があるということを認識していたことです。

例えば、REBEL BOOKSとON READINGもビジネス書は置いてなくて、そうした本は他の本屋でも置いているからという話をされていました。

つまり他の本屋との役割も意識しながら、その街やその本屋を好んできてくれる人たちにとって必要な本はどういうものなのか?を大切にしているということです。

また「欠如を満たす」という言葉もあり、そうした視点を常に忘れずに丁寧に作られている本屋だからこそ、場所としての面白さが出ているのだと感じました。

本屋はダイナミックな市場であり、メディア

本屋 市場

出版側の視点含め、多くの本は著者、そして編集者は、「今」に意味があるものと思って作っているといいます。そして、それがせめぎ合って置かれているのからこそ、本屋は「今」の時代を集積した場所になっているとも言えるでしょう。

さらに、それを書店員さんが「これこそ今じゃん」ということでピックアップしてそれぞれの場所に最適な場所を作っている訳です。

まさに市場(いちば)で、旬なものが常に水揚げされているイメージが浮かびます。

また本屋側として定番で置いておきたい本と新しいものとのせめぎあいが常にあるといいます。だからこそそのせめぎ合いに勝利して置かれた本があつまった有限な場所は、それだけで一つのメディアになっているのではないでしょうか。

本当に面白い場所です。

本屋で本を買う意味

本 買う

今回のイベント中、書店員も他の本屋で買うことはあるのか?という質問がありました。

それに対して、皆さんの答えは、「買います」と即決していました。

せこい話、本屋として仕入れて、自分の本屋で買うほうが安く買うことができるわけです。それでもそのようにしない訳は、その本屋で買うことに意味があるということです。

例えば、旅先で寄った本屋で出会った本というのは、その場所、その本屋、そして、その時の気持ちも含めて買うということであり、そうした体験が読むことの動機にもなります。

もしその場で買わなければ、もしかしたらその後も買うこともないかもしれません。もし買っても積ん読となり、きっと本と関係も浅いものとなってしまうのではないでしょうか。

もちろん本を買うならアマゾンや楽天のが安くて、便利な面もあるのは否定できることではありませんので、最終的には自分にとって最適な選択をすれば良いと思います。

それでもその本屋が持つ場のダイナミックさやそこにいる人たちを含む体験も買うという視点で本屋に行ってみると、今までにない本屋の面白さがうまれてくるかもしれません。

本を選ぶ楽しさ

本屋が好きな身として、今回のイベントでその裏側を知り、さらにいろんな本屋に行きたいと思える時間となりました。

この記事では、本棚の本の入れ替えや手狭になったときにどうするのかなど本屋の運営面の詳細については触れませんでしたが、もしそうした裏側が気になる方は、以下の本を読んでみると良いかもしれません。

書店員さんの知恵と工夫が学べる内容となっていて、知り合いの書店員さんからもとても参考になったと言われた本です。

改めて本屋という場所は、能動的に行動できる場所でもあると思いました。もちろん本屋から提案もありますが、その中でどのように感じ、どのように考え、どのような物を選ぶのか。それはすべてお客に委ねられています。

誰かに勧められたり、アマゾンにレコメンドされたりといった便利で受動的になりやすい世の中だからこそ、たまには本屋に足を運んでみるのもいかがでしょうか。

早速、今回のゲストで参加された方の本屋に行ってきます。

またおすすめの本屋をまとめていますので、本屋に行きたいと思った方は参考にしてください。

書店のご案内

※以下の情報は、本棚を編集する〜書店員というくせのゆくえ 【3月発売予定『編集の提案』刊行記念イベント】のpeatixイベントページより引用しています。

青山ブックセンター 本店

表参道駅から徒歩約5分、渋谷駅から徒歩約10分にある、ワンフロアの店舗です。デザイン・広告・写真・アートなどクリエイティブ系の書籍と、海外文学をはじめとした文芸や人文書が強みです。本を通じた学び場としてのスクールも併設しており、著者を招いたイベントも開催しています。ビル敷地内に駐車場、駐輪場もあります。

ON READING

名古屋・東山公園に店舗を構える本屋です。何かを感じたり、疑問に思ったり、考えるきっかけとなるような、多様な価値観を教えてくれる本を、新刊、古本問わずセレクトしています。また併設するギャラリースペースでは新進気鋭のアーティストを中心に、様々なジャンルの企画展示を開催するほか、トークイベントやワークショップなども不定期に開催しております。

REBEL BOOKS(レベルブックス)

群馬県高崎市、JR高崎駅から徒歩20分のところにある新刊書店。2016年12月オープン。品揃えはなるべく幅広く、知的好奇心を刺激する棚でありたいと心がけて選書している。カウンターでコーヒー、ビール、日本酒なども提供。広さは約10坪、二階にイベントスペースがあり著者トークイベント等はそちらで開催している。パンデミックでトークイベントはお休み中、かわりにオンラインショップを始めた。

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読書しない読書会
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みたっくす

本のある暮らし応援メディア「booklife」運営者。 podcastでは本のある生活を中心に、本に纏わる話から本の感想、本の未来に関する考察を発信しています。月に一度「読書しない読書会」を開催しています。

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