本の感想

『二宮翁夜話』徳を持って徳に報いる道を知る

2022年1月23日

二宮翁夜話

実践的篤農家であり、国学・儒学・仏教に通じ農政哲学を追究する求道者でもある。そして一家、一村、一藩の財政再建にはリアルなプロ。尊徳翁、かく語りき。

引用元: 中央公論新社HP『二宮翁夜話』

こんにちは!みたっくすです

ひょんな機会で『二宮翁夜話』を読む必要があり、読み始めて10分で二宮 尊徳(金次郎)氏(1787-1856)(以下「二宮尊徳」と呼ぶ)に対して持っていた印象はガラッと変わりました。

二宮尊徳といえば、薪を背負って、本を読みながら歩く銅像のイメージが強く残っています。通っていた学校にもあったことから身近な存在でもありましたが、子供の頃の印象は、勉強熱心(勤勉)な人というくらいで、それ以上深く知ることはありませんでした。

それが本書や本書を通じて読むことになった『報徳記』により、その印象は大きく変わり、今まで知らなかったことを後悔したくなるほどの衝撃を受けました。

なぜなら二宮尊徳の取り組みや考え方を知ることは、日本人の歴史を知ることであり、後世の日本人に大きな影響を与えていたことを強く思ったからです。

二宮尊徳は代表的日本人の1人

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内村鑑三による『代表的日本人』(偉大な五人の日本人の生き様を1895年の日清戦争中に海外に向け英文で発信した『Japan and the Japanese』)には、西郷隆盛・上杉鷹山・二宮尊徳・中江藤樹・日蓮の5人の挙げられていることから、当時から日本に多大な影響を与えていたのでしょう。

二宮尊徳は、困難な農地改革や当時の藩の財政再建を行ったことで知られています。畑は荒れ地となり作物も育たず、多くの人が土地を離れていく、そして、当然そうした中で天候による飢饉が訪れれば、そこに住む人達の生活は困窮を極め、餓死する人がたくさん出ているような環境を再建していきました。今で言うならば状況は違えど、地方が抱えている課題であり、つまり地方創生を数多くやり遂げた人と置き換えても良いかもしれません。

二宮尊徳の報徳思想

そうした再建を実現した二宮尊徳の考え方は、報徳思想(報徳学)と呼ばれており、報徳・勤労・分度・推譲の4つの実践徳目が柱となっています。

  1. 報徳・・・生活の信条。人間は天地人三才の恩徳によって生かされており、その恩徳への恩返しに、働くという人生観
  2. 勤労・・・天地人から受け取る恩徳が無限であるために、力のかぎり働いて返そうという情熱。物を作ること。そして、積小為大(小さい事が積み重なって大きな事になる。だから、大きな事を成し遂げようと思うなら、小さい事をおろそかにしてはいけないという意味)
  3. 分度・・・資産に応じた消費生活。過剰な消費行動を是とするのではなく、生活の分を守る計画的な消費
  4. 推譲・・・分度して余剰が出たらその多少にかかわらず他に譲ること

281話にも及ぶ説話『二宮翁夜話』

二宮翁夜話

二宮翁夜話』は、そうした思想に触れることができます。

281話にも及ぶ説話で構成されており、尊徳の身辺に奉仕した福島正兄が、随従する中で聞いていた尊徳の説法をまとめたものです。説話としてまとめられていることで、その時代に悩まれる人たちの様子とともに、まるでその場で聞いているかのような作りとなっています。

その内容は、「1話:天理の心理」からその話の深みに圧倒されます。

誠の道というものは、学ばないで自然に知り、習わないでおのずから覚え、書籍もなく、記録もなく、師匠もなく、しかも人々がおのずから心に悟って忘れない。これこそ誠の道の本性である。(中略)私の教えは、書籍を尊ばず、天地を経文としている。後略(後略)

著者である福島正兄は、報徳学は、実行学であり、道徳と経済の道と説明をしているとおり、本から学ぶ学問や思想とは一線を画していることが伝わってきます。

さらに尊徳は、「私の教えは、徳を持って徳に報いる道」だと説きます。
今でも「徳を積む」という、人による善の行いは、本人だけでなく子や孫にまでプラスの影響を与えるという意味合いで捉えている人も多いでしょう。

二宮翁夜話』には、人の道を正すにあたって、この「徳」に関するエピソードが数多く語られます。

二宮翁夜話』の1話1話は決して長い分量ではありませんが、一言一言が示唆に富んだ内容ですから、じっくり今の自分と向き合いながら読むような本です。なにより私のように銅像のイメージのままの方には、是非読んでもらいたい本です。知ることができてよかったと、きっと思うことになることでょう。

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また徳を持って農地開拓や財政再建を実現した当時の具体的な経緯に関しては『報徳記』により詳しく記されています。

報徳記』は、二宮尊徳の生涯を、その没後直ぐの時期に、最も近くに居て、尊徳からの信頼を得ていた門人が描いた伝記となります。二宮尊徳について知りたい方は、先にこちらを先に読むほうが良いかもしれません。

 

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