こんにちは。みたっくす(@book_life_net)です!
booklife(ブックライフ)では、「本のある生活」を目指して、本と触れ合うきっかけや本のある楽しい日常を発信しています。
映画『ブックセラーズ』を観てきたのですが、ものすごい作品でした。。。
まずは登場する希少本の数々。
1万5000年前のマンモスの毛が標本として付いている『マンモス探検』という本や1611年に出版された『ドン・キホーテ』の本が紹介されたりします。極めつけは人の皮膚で装丁された本など今では想像できないような「本」が登場します。
次にお値段。数十万ドルする本が次々に紹介されていきます。
そして何より、そんな本を収集し、販売する本作に登場するブックセラーの人たちに興味を持たずにいられませんでした。
まさに生きるbooklifeな人たちのドキュメンタリー映画です。
『ブックセラーズ』の舞台はNYブックフェア
世界最大規模のニューヨークブックフェアの裏側を舞台に話は進んでいきます。
そこではニューヨークの書店の現状にも触れています。かつてグリニッジヴィレッジにあった「ブックロウ」と呼ばれた書店街も、1927年には48軒もの書店が連ねていたが、現在はストランド書店のみになっているといいます。
『ブックセラーズ』では、そうしたNYブックフェアやブックロウの現状も踏まえ、個性あふれるブックセラーへのインタビューや仕事ぶりが紹介されていきます。
監督のD・W・ヤング氏は、登場するブックセラーたちを”良き変人(GOOD WEIRED)”と表していますが、まさにそのとおりで特に笑いを、時に感動を与えてくれる彼らに惹きつけらずにはいられず、この作品の醍醐味となっています。
一方で、本作では本を取り巻く環境に対して悲観的な話にも真剣に問いかけます。
アマゾンの存在、大型チェーン店、紙からデジタルへ、そして、本を読まなくなった人たちとここ10年数年で劇的に変わった世の中。さらにリアルな本が置かれている書店の厳しい現況についても鋭い分析を加えます。
ただし、ブックセラーたちはそうした現状にも真摯にしっかりと意見を述べているところが印象です。
一人ひとりの会話からは未来への見通しは厳しいように感じるかもしれません。しかし、不思議なことに映画を見終わったときには、「本には未来がある!」と期待させてくれるのです。
『ブックセラーズ』が映し出す「本の未来」
映画では、人気TV番組「アメリカお宝鑑定団ポーンスターズ」に出演して有名になった若手ブックセラー レベッカ・ロムニーのこんなメッセージを紹介しています。
「上の世代は悲観的だけど、私は大丈夫。アイデアがいっぱいだから!」
こうしたメッセージは、ますますデジタル化が進んでいってもリアルな本がなくなることはないと信じたくなりますし、書店も、の先も存在し続けていくであろうと期待させてくれます。
そして、特に未来を考える上で印象に残っているシーンは2つあります。
1つは、デジタルやネットが必ずしも万能ではないということです。
例えば、デジタルの情報は改ざんやフェイクに溢れているということを認識し始めた人達が本に戻ってきているといいます。そこには本という形になることで、改ざんができず、信頼たる情報源として役割が増しているという考察があります。
さらに歴史を知りたい時、本に頼らざるを得ないという事実があるということです。
映画の中では、ヒップホップ(HIPHOP)を例に上げて紹介しています。
ヒップホップのアーカイヴィスト シリータ・ゲーツは、ヒップホップの情報を求めているときその情報がネットにないことを知り、情報を得るために雑誌を集めていく中でヒップホップが希少本であることを知っていきます。
歴史を知る上で、本というものの有効性。そしてネットの情報も、本があって初めて作られていくという事実は、一つのヒントなのかもしれません。
2つ目は、インディペンデントな書店が増えてきているという話です。
本作では若い世代のエリック&ジェスがNYグリニッジ・ビレッジが復活させた老舗書店、レフト・バンク・ブックス(Left Bank Books)を紹介しています。
「地元のお客さん、作家さん達に熱烈に支持され、成長、繁栄していく、大型チェーン書店とは方向性が逆」といった意味合いの発言をエリックは語ります。
小さくて、専門分野をキュレーションしているこうした書店が増えているのは、NYに限ったことではありません。インディペンデントな書店は、韓国のソウル・台湾の台北、そして日本などアジアでも同じような動きが見られます。
詳しくは以下の本をおすすめします。
国内でもインディペンデントの書店が増えているというニュースを目にすることが増えています。そこにデジダルの世界が当たり前の若い世代の人たちの感性が混じりあっていくことで、今まさに大きなパラダイムシフトが起きようとしているのかも知れません。
こうしたお店が今後どのような形へと進化していくのか、期待が膨らみます。
※本屋の未来についてインディペンデント書店を運営している店長へインタビューをしています。興味のある方はこちらも読んでみてください。
続きを見る弐拾dB(ニジュウデシベル)の藤井店主と語る持続可能な本屋とは?
続きを見るplateau books(プラトーブックス)の中里店主と語る本屋の未来
ブックセラーと本にまつわる物語を楽しもう
実は『ブックセラーズ』の映画プロデューサーのダン・ウェクスラーは、希少本ディーラーと二足のわらじで活躍している方です。だからこそ自らの経験も含む本の現実を映画に落とし込んだ作品であり、より現実味のある作品に仕上がっているように感じます。
そして、何度も繰り返しになってしまいますが、本作は、本の未来について真剣に問い、未来への希望に溢れたドキュメンタリー映画といえるでしょう。
普段から本を読んだり、本を読みたいなと思っている人にとっても「本」や「書店」というものをより大きな視点で考える機会にもなるのではないでしょうか。
一方で、TV番組「お宝鑑定団」をみている感覚で楽しめる作品であることも補足しておきます。
どういったところに本の価値があるのか?そして、その驚きの金額に興奮することもあることでしょう。
とにかく素晴らしい作品でした。だからこそ「本」ということでこの映画を敬遠することなく、多くの人に観てもらえることを期待しています!
DVD化、Amazon Primeでも配信が開始しましたので、自宅でも見れるようになりました。