こんにちは。みたっくす(@book_life_net)です!
『旅人』は、日本初のノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹氏(以下、湯川博士と称する)の前半生を綴った回想録です。27歳までの本人の記憶や周りの人たちの記憶をたどりに文学表現豊かに表現されています。
本に書かれている湯川博士の幼少時から青年期までの1900年代前半は、物理学において大きな発見が相次いで発表されていました。
例えば、有名なアインシュタインの相対性理論も1905年に提唱されています。まさに完成の域に達していたと思われた古典物理学が、再構築を余儀なくされるような理論が頻繁に提唱される時期に、湯川博士は1907年に生を受け、物理学の道へと進んでいきました。
そして、ついに1935年には、「中間子(原子核を構成する中性子と陽子を結びつける「核力」を媒介する粒子)」と名付けた理論を提唱し、14年後の1949年にノーベル物理学賞を受賞するに至りました。
と、湯川博士について説明すると、その偉業について詳しく書きたくなるものですが『旅人』では、その論文を世界に発表する手前までしか書かれていません。
その理由を、巻末に書かれた「おわりに」で以下のように記述しています。
この「一途に勉強していた」ことを懐かしむ背景には、論文発表後「好きなこと」を思うようにできない日々が続いていたからかもしれません。
というのも湯川博士の前半生は、「好きなことを続けてきた道のり」の先に物理学の道があったからです。
好きなことに打ち込み続ける中で見つけるその人の道
本書にも何度も書かれていますが、少年時代の湯川博士には、「物理学」の道に進む動機を発見することができません。やがて大学で物理学を専攻することにはなるのですが、それまでは偶然のきっかけも含めて、多くの興味の移り変わりがありました。
湯川博士は、父親が学者ということもあり、家には様々な方面の本が置かれており、幼少期からそれらを読み漁って育ちました。トルストイといった外国文学もあれば、漢文学、和歌などその幅は広く、小学生にあがる頃の愛読書が『太閤記』と書かれていますから、よほどの読書家であったことが伝わってきます。
こうした興味のままに濫読をしていたことに対して、以下のように振り返っています。
この言葉の通り、興味のままに本を読んで育っていく中で、やがて運命のいたずらもあってか物理学の方へと興味が移っていき、大学に入ってから打ち込むことに至ります。
現在の社会において、大学や社会人になってからも教養・リベラルアーツを身につけようという取り組みを多く目にしますが、湯川博士の半生を知る中で、教養を身に付けていくことの意味を教えてくれます。
一つは、「好きなことを学び続ける」ことの先にしか、その人の道は見つからないということ。
そして、教養は、何かの目的のために身につけるのでなく、目的を達成する過程で自然と活かされるものということです。
湯川博士は、決して教養を身につけようとは考えていなかったと思います。
ただただ興味の赴くままに、真剣に学び、考え続けていく中で、自らの道を見つけていき、その道の中で自然と身についていた教養が活かされたのだと思います。
自らの道を見つけ、未知の研究をすることに対して、湯川博士は以下のような名言を残しています。
この言葉は、研究に限らず、生き方においても大きな示唆のある言葉ではないでしょうか。
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