書評

『地球の未来のため僕が決断したこと』今、何をすべきかを示す、未来への提言

2021年11月13日

地球の未来のため僕が決断したこと
  • 二酸化炭素換算の温室効果ガスの年間排出量「510億トン」
  • 目指さなくてはいけない排出量「ゼロ」
  • グリーンな代替物にしたときに追加でかかる費用を表す「グリーンプレミアム」

この3つのキーワードによって人類が地球に与えている影響を正しく認識するとともに、これからの未来に何をすべきかを本書は明らかにします。

ビル・ゲイツ氏の視点

本書の著者であるビル・ゲイツ氏は、マイクロソフト創業者としてビジネスで大成功を収めた経営者であり、テクノロジーマニアです。

さらに次世代の原子力テクノロジーから牛肉風味の代替肉まで、気候変動に関わる技術の商業化を目的とするブレークスルー・エナジーを立ち上げており、本書の中身は、そうした活動で得た知見や思考の結果が多く語られています。

例えば、510億トンという温室効果ガスを以下の5つに分類し、それぞれの現状と課題を正しく認識し、そのための解決策をテクノロジー(イノベーション)の視点でアプローチします。

人間の活動によって排出される温室効果ガスの量 ※書籍より引用

  • ものを作る(セメント、鋼鉄、プラスティック)・・・:31%
  • 電気を使う(電気)・・・27%
  • ものを育てる(植物、動物)・・・19%
  • 移動する(飛行機、トラック、貨物船)・・・16%
  • 冷やしたり、温めたりする(暖房、冷房、冷蔵)・・・7%

こうした5つの分野に対して、それぞれ目指すべき成果に対して「グリーンプレミアム」を算出し、その指標を下げるという誰もが理解しやすい形へと課題をシンプル化している点など、経営者としての著者の思考を理解する上でも役に立ちます。

テクノロジーへの信頼。ゼロは実現できる

さらに著者のテクノロジーへの信頼が、厳しい現実を突きつける本でありながら、未来は明るいと思わせてくれるのもこの本ならではの特徴でしょう。

”僕は楽観している。技術が何を成し遂げられるか知っているし、人びとが何を成し遂げられるかも知っているからだ。”

という発言で本書を締めくくっているとおり、彼は技術によって「ゼロ」を実現できることを確信しているのです。

目標は、排出ゼロでなくてはならない

それでも目標をどこに置くのか?という点に彼は警笛を鳴らします。

本書を読むと、2030年までに排出を少し削減するためにすべきことは、2050年までに「ゼロ」を達成するためにすべきことと根本的に異なる点がよくわかります。

2030年までに「ある程度」の排出削減をするつもりで出発すると、その目標を達成するための取り組みに集中することになります。「ある程度」の排出削減であれば、すでにある技術を組み合わせて活用する努力をすれば達成できるかもしれません。

ただし、達成できたとしても50年のゼロを達成するための取り組み(イノベーションの研究)をしていないので、最終的な排出「ゼロ」にする目標達成は困難になります。

ちなみに科学によると、気候大災害を防ぐために、豊かな国は、2050年までに排出「ゼロ」を達成しなければならないといいます。

本当に達成しなくてはならない目標のためには、短期的には成果に出ない選択をする勇気を持てるかどうかが、私たちには求められているのです。そして、この目標の持ち方の違いは、世界中で行われている施策に対して、本気でゼロを目指しているかどうかを写す鏡になります。

低中所得者を置いてきぼりにしない

一貫して著者は、低中所得者を置いてきぼりにする進め方はだめだと発言しています。

2008年7月にマイクロソフトの経営とソフト開発の第一線から退き、「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の活動に専念すると発表し、途上国の病気の根絶から教育・貧困問題などの解決に尽力しています。

きっとそうした活動を通して強く思うことがあるのでしょう。こうした自らの経験から語られる視点は、この本をさらに示唆に富んだ内容にしています。

本書は、気候変動の未来を見通す上で大いに役に立つ本であり、今、自分たちが何をすべきかを示す、まさに未来への提言です。

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